小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
時は流れ、今日は卒業式だ。
学生と卒業生の保護者が出席していて、講堂は人で埋め尽くされている。
式辞を読むのはレオで、来賓として出席している陛下は、涙目でそれを見ていた。
……うん。本当に親ばかだよね。
「私がこの学園に通ったのは、ほんのわずかな期間です。けれど、ここで得た友は一生の宝となるでしょう」
いつの間に友達を作ったんだ。おかしくない? 私なんてずーっと通っていたのにローレンしか友達いないけど。
「ねぇ。レオ様こっちばっかり見てない?」
にやにやと笑いながら私に耳打ちするのはローレンだ。
「そう?」
「あれ、絶対褒めて欲しいアピールだよ。レオ様、リンネの前だと子犬みたいだよね」
「そうかな」
私たちの会話を聞いていたのか、周りの女生徒もうんうんと頷きだす。
「悔しいですけれど、レオ様はリンネ様しか見ておられませんものね」
ポーリーナ嬢が苦笑する。
私がレオを救った話と、その後私が回復するまでのレオの献身的な介護は、ローレンにより美談となって伝わっていた。おかげで、学園に復帰してから、みんなが妙に優しい。
「あたり前よ。リンネはレオ様の命の恩人だもの!」
得意げに言うのはローレン。なぜ私よりあなたが誇らしげなのだ、とは思うけれどまあいいや。
せっかくのレオの晴れ姿を、目に焼き付けておく方が大事だもん。