小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「だからといって創作までする?」
「する。止めたって無駄だからね」
そう言われても恥ずかしいからやめて欲しい……とは思うけれど、ローレンが私の言うことを聞くとも思えない。どうせ個人で楽しむためのものなんだろうし、……放っておくしかないのかなぁ。
「話を戻そう。ストレスってなに? 書くのにストレスが溜まっているなら、辞めなよ、今すぐに」
「逆よ。もっと書きたいのに、忙しくて時間が足りないの! んもー、クロード様がスパルタ過ぎるんだよね」
ローレンは、クロードが立ち上げた魔術院の広告塔として、学生でありながらも様々な依頼を受けている。
そのほとんどは、傷を癒す力を持つ聖女としての活動らしいのだが、実際のところ、ローレンの癒しの力は不安定なものらしい。使えるときもあれば、使えないときもある。その不安定さを解消するために、課題を課せられているらしい。しかも、放課後に魔術院に呼び出されてカンヅメなのだそうだ。
「ほぼ毎日だよ? 放課後潰されて。やってられないよー。そりゃ、癒しの聖女って言われるのは気分いいけどさ、こう毎日じゃ疲れてくるのよ」
「じゃあ、クロードに言って、休みをもらえばいいじゃん」
「私が言ったって聞いてくれるわけないでしょう。だからさ、リンネに手伝ってほしいんだよ」
「いいけど、手伝うって何をすればいいの? 私は、魔術を使えないし。自分の話を自分で書くなんて嫌だよ」
「そっちは頼んでない。リンネに書かせたら色気のない話にしかならないもん。大丈夫、リンネならば魔術院に一緒に来てくれるだけですっごく役に立つから」