小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 やがて、やってきたのはクロードだ。

「やあ、今日は大人数だね」

 いつも通りのにこやか笑顔で、私がいることにも温和に応じたけれど、レオを見るとふっと笑顔を消す。

「レオ、君は執務中だろ。ここは僕が管理しているから、戻っていいよ」

「俺の婚約者が世話になるんだから、少し見学していく。父上からはお時間をいただいているから心配するな」

「ふうん。まあいいよ、どうぞ」

 招かれた部屋には、クロードがレットラップ子爵を通じて揃えた魔術書が棚に並べられ、いろいろな色の鉱物が並べられていた。

「クロード、魔術に鉱物って必要あるの?」

「うん。純粋な鉱石であるほど、魔力を高める効果があるらしいよ」

「魔術院って具体的にどういうことをするの?」

 私が思いつくまま質問していくと、クロードが丁寧に答えてくれる。魔術について、私は詳しく知らなかったので、聞いているうちに楽しくなってきた。

「ゴホン!」

 咳払いがして我に返ると、すぐ後ろにレオがいた。

「レオ?」

「リンネ。おまえがクロードの仕事の邪魔をしてどうするんだ」

「あ、そっか。ごめんなさい。ローレンもごめんね。なにを手伝えば……」

「そのままでいいです。ばっちり手伝いになっていますから!」

 ローレンはご機嫌で私たちを眺めつつ、件のノートにペンを走らせている。なにを書かれているのか、考えると怖いな。
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