小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 ところが、ローレンは容赦なく切り込んできた。

「なんでって。相変わらず呑気だよねぇ。普通、相手がいるなら卒業と同時に結婚するものでしょ」

「でも、……早くない? ねぇ」

 助けを求めてレオを見上げると、彼は何とも言えない顔をしていた。

「まあ、別に早くはないが。……リンネが嫌だというなら待つ気はあるぞ」

「ほら」

 やっぱりレオは私のこと分かってくれる。ほっとしてローレンに言えば、ものすごく渋い顔を返された。

「レオ様、リンネがその気になるの待ってたらおじさんになっちゃいますよ。この子、恋愛にはものすごく疎いんですから」

「だが無理強いするものでもないだろう」

「はー、よく言う。したくてたまらないくせに」

「なにか言ったか?」

「いいえー。レオ様がいいって言うなら、いいですけどね! あーあ、私も結婚相手探さないとなぁ」

 ローレンはこれまでレオを運命の相手と思って動いてきたから、他の男性へのアプローチを全くしていない。けれど、これから探そうにも、学園も最終学年となれば、同級生の令嬢はほぼ相手を決めている。周りは売却済みの男子学生ばかりで、なかなか結婚相手が見つからないのである。

「聖女となればなかなか難しいんじゃないか」

 ローレンのつぶやきに、答えたのはレオだ。

「そうなんですよ。なにせもうひとりの聖女は王太子様の婚約者ですからね。無駄にハードル上げてくれて……全くもう」

「いざとなればクロードに責任を取らせればいいじゃないか」

 さらっととんでもないことを言い放ったレオに、ローレンは非常に苦い顔をした。

「イケメンでも、腹黒はあまり好きじゃないんです」


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