小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
飽きて魔術書をパラパラめくるだけになっていたローレンが、ふと動きを止め、今度は一心不乱に読み始めた。
「ね、おもしろい魔法があった」
「どれ?」
「魅了の魔法だって。回復魔法よりこっちを覚えたい」
魔術書は、リトルウィック語か古代語のどちらかで書かれているので私には読めない。だがローレンは、子供のころから家にある魔術書を読んでいたので、ある程度は読めるらしい。
「えっと、本来持つ美しさを二倍にも三倍にも見せる魔法。女性としての魅力に不安を感じている人向け……だって」
「呪文は古代語? 読めるの?」
「うーん。なんとか?」
そのうちにクロードが戻ってきた。なにかいい話でもきいたのか、顔がほころんでいる。
「クロード、なにかあったの?」
「うん。実は……前々から打診していた、魔術の指導者に来てもらえそうなんだ」
「指導できる人は国にはいないんじゃなかったの?」
「うん。だからリトルウィックからだよ」
クロードが興奮して早口になっている。私だってビックリだ。
「でも、リトルウィックとは国交がないんじゃなかったの?」
「表向きはね。でも、二十年ほどまえには婚姻を結ぶくらい開けていた時代もあったんだよ。その当時、かの国に留学して、国交断絶後そのまま残ったという人間もいる。逆もまた然りだ」
例えば、二国が友好的な時期に出会い結婚したという夫婦もいる。彼らの多くは、どちらかの国へ移動し、リトルウィック出身またはハルティーリア出身であることを隠して暮らしているのだという。レットラップ子爵夫妻もそのひとりで、そのため、彼はそういった立場の人間への伝手を持っているのだそうだ。
「ね、おもしろい魔法があった」
「どれ?」
「魅了の魔法だって。回復魔法よりこっちを覚えたい」
魔術書は、リトルウィック語か古代語のどちらかで書かれているので私には読めない。だがローレンは、子供のころから家にある魔術書を読んでいたので、ある程度は読めるらしい。
「えっと、本来持つ美しさを二倍にも三倍にも見せる魔法。女性としての魅力に不安を感じている人向け……だって」
「呪文は古代語? 読めるの?」
「うーん。なんとか?」
そのうちにクロードが戻ってきた。なにかいい話でもきいたのか、顔がほころんでいる。
「クロード、なにかあったの?」
「うん。実は……前々から打診していた、魔術の指導者に来てもらえそうなんだ」
「指導できる人は国にはいないんじゃなかったの?」
「うん。だからリトルウィックからだよ」
クロードが興奮して早口になっている。私だってビックリだ。
「でも、リトルウィックとは国交がないんじゃなかったの?」
「表向きはね。でも、二十年ほどまえには婚姻を結ぶくらい開けていた時代もあったんだよ。その当時、かの国に留学して、国交断絶後そのまま残ったという人間もいる。逆もまた然りだ」
例えば、二国が友好的な時期に出会い結婚したという夫婦もいる。彼らの多くは、どちらかの国へ移動し、リトルウィック出身またはハルティーリア出身であることを隠して暮らしているのだという。レットラップ子爵夫妻もそのひとりで、そのため、彼はそういった立場の人間への伝手を持っているのだそうだ。