小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そうして、私は久しぶりに女同士でショッピングという前世らしいことをした。
 レットラップ商会はかなりの大手のようで、街の人はローレンのことを商会のお嬢さんと言って、手厚くもてなしてくれたのだ。

「これもいいよ、リンネ」

「でもそんなに持ち合わせないもん」

「レオ様に言えば出してくれるって」

「駄目だよ、そんなの」

「もー! リンネは固いな。そんなんだから、レオ様と進展しないんじゃん。……分かった。これは私からのプレゼントにする」

 ローレンが見せてくれたのは、蝶をモチーフにした髪飾りだ。金で作られた本体に、色の違う七つの宝石がランダムに配置されていて、どんな服に合わせても合いそう。

「……かわいい。でも可愛すぎて似合わないよ、きっと」

 前世と違って見た目は完全に令嬢の私だけど、釣り目のせいでキツイ印象がある。かわいらしいものは似合わないんだろうなという思いは常にある。

「素直に好きなもの身に着ければいいのよ。あの頃の凛音は少年みたいだったかもしれないけど、今は立派な伯爵令嬢じゃん」

「でも、中身と釣り合わないじゃん」

「そう思ってるの、たぶんリンネだけよ」

不愉快そうに眉を寄せ、ローレンがぼそりと言った。

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