小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 ……そんなわけで、歓迎の宴の日となる。

 私とローレンは、王妃様のご厚意で、開始の三時間前から王城に呼ばれていた。以前の婚約披露のときのように、磨き上げてもらうのだ。

「お待ちしておりました。どうぞ、リンネ様、ローレン様」

 溌溂とした声に迎えられ、あっという間に丸裸にされ、磨かれ、塗りたくられ、整えられること二時間。

「すごいなぁ……」

 鏡に映る自分は、どこからどう見ても美しく気品のある令嬢だ。腰はコルセットでキュッと絞られ、いやらしくならないギリギリくらいまで開いた胸元。レオの瞳の色に近い紫の大人っぽい生地に、白のレースが重ねられたドレス。首にはレオのプレゼントであるネックレス。今日はそれに、ローレンがくれた蝶の髪飾りをつけてもらった。

「とってもお似合いですわ。素敵です」

「どうもありがとう。皆さんに着つけてもらうと別人みたいになれて、ホッとしちゃう。いつもの私だと、レオの婚約者だなんていうのもおこがましいから……」

 へへへ、と笑って見せるけど、実際結構気にはしているんだよね。
 レオが好きだって自覚してからは、昔は平気だった、『王太子様にはふさわしくない』という声が、えぐるような鋭さを持つようになっちゃって。

「リンネ様はお綺麗ですよ。普段は動きやすさを重視されているから、どうしてもあっさりした装いになるだけでしょう」

 王城の侍女たちは優しいなぁ。励まし方がうちの侍女たちとは違う。

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