小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「レオ様よりは年上ですよ、私。八歳ですよ?」

「俺は九歳だ」

「え?」

 リンネはまじまじとレオを見る。背はリンネより低いし、線も細い。どう見ても年下だと思っていたのに。
 視線にいたたまれなくなってきたのか、レオはぷいとそっぽを向いた。

「一年前までは学園にも通っていたんだぞ、なぜおまえは覚えていない! 不敬だぞ!」

 ふけい、と口の中で一度言葉を転がして、「ああ、失礼ってことですね!」と言うと、あきれたようなため息をつかれた。

 あきれられたかな……と少々バツが悪くなってうつむいていると、レオの脇から「ぶっ……くくくっ……」というクロードの笑い声が聞こえてくる。

 さっきっからこの人は笑いっぱなしだ。腹筋が疲れたころだろうし、そろそろ笑うのはやめて助けて欲しい。
 そう思ってじっと見つめると、視線に気づいたクロードがようやく顔を上げた。

「ああ、おもしろかった。すごいですね、リンネ嬢。レオがこんなに話すのは一年ぶりです」

「……そうなんですか?」

 そういえば、最初に会ったときはほとんどしゃべらなかった。だからこそ、無理やり服を奪い取る暴挙に出たわけだが。

「えっと、それはいいことですか? それとも私があまりに失礼でした? でしたら謝りますけど」

 今更のように謝って見れば、レオからくしゃくしゃに丸められた紙が飛んでくる。しかもこれ、課題の書いてある紙のようだ。どうするのだ、怒られるではないか。

「謝れなんて言ってない」

 顔を赤らめたままそんなことを言われた。なんだこれ、ツンデレか。
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