小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 お、なかなか可愛いことを言うね。もしかしたら、レオにとっても、自分に触れる女の子がいたってことは希望になったかもしれないもんね。

「だが、リンネ以外の女はまだ駄目だ。子供ならなんとか……と思ったが、さっきの赤毛の女が腕に触れた途端に鳥肌が立った」

「なんで私は大丈夫だったんだろうね」

「それは俺も知りたい。出会いが強烈過ぎたせいか、おまえに関してだけは平気なんだ」

 結局、レオにもクロードにも、文字に刻まれた内容や、女性にだけ触れないことへの関連性は分かっていないようだ。正直、私も全然分からない。お手上げだ。

 レオはむき出しになった腕の文字をそっと撫でる。

「この腕が、まだ痛むんだ」

「え?」

 凛音の世界の刺青は消えることはないらしいけど、刺してしまえばあとは痛まないはずだ。普通の刺青とは違うのだろうか。

「いつか消えるかと思っていたが、消えることもない。時折、脈打つように痛む。まるで、忘れるなと伯母上に宣言されているようで、気が滅入る」

「嘘……」

 だとすれば、レオはいったいいつ、気が休まるというのか。

「今も痛い?」

「……痛くないとは言わない」

「え、どうしよう。どうしたら痛くなくなる?」

 慌ててレオの腕を握る。痛みを和らげるつもりで、腕をもんでみたけど、顔をしかめられてしまう。

「ごめん、痛い? 触らない方がいい?」

「……いや、いい。そのまま続けて」

「うん」
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