小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「リンネ嬢。私はレオに、信頼できる友人を作ってほしいのだ。成人すれば、あの子が王子として単独で執務にあたることもあるだろう。そのときに女性と全く触れ合わないのは無理がある。女性に触れられないという症状が治らないとするなら余計、あの子には、事情を知りサポートしてくれる人間が必要だ。その人物は、命令で動く部下よりは、あの子を心から心配してくれる友人であってほしい」

 陛下の言うことはもっともだ。
 私はレオより年下だけど、前世の記憶もある分、レオを弟のように思ってきた。だからこそ、陛下がレオに対して心配していることも十分に納得できるし、できるならば力になってあげたいと思う。

「分かりました。これが最後のチャンスだと思って言ってみます」


 そんなわけで、いつもの午後の勉強時間、先生が課題の採点をしている間の待ち時間に、気軽な調子で誘ってみた。

「ねぇ、レオも学校に行こうよ」

「嫌だ」

 仏頂面で即答された。

「どうして!」

「今更面倒くさい」

 あとは実のない言い合いが続くだけだ。だから話しても無駄なのにって思っちゃうんだよなぁ。

「それより、狩りの話だが」

「狩り! いつ行く?」

 最近、私達の間ではウサギ狩りが流行っている。
 執務につくようになったクロードが、休みの日に私とレオを誘ってくれたのが始まりだ。

 凛音のときならば野蛮だと思ったのかもしれないけれど、採りたてのキジ肉やウサギ肉を調理してもらって食べてから、私はすっかり狩りに夢中だ。おいしいものに罪はない。

 そのために乗馬も弓も習った。必死に練習したから、私は乗馬がかなり上手だ。レオにもクロードにも負けないスピードでついていける。まあ、狩猟の腕前はいまいちだが。

「三日後の休日に」

「行く行くー!……って、話そらさないで、レオ。学園に行こうって話だよ」

 危うくのせられるところだった。危ない。
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