小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そんなわけで翌日の昼、一度屋敷に帰って、クリームイエローの華やかなドレスに着替えてから、城で父と合流した。いつもの勉強用の部屋ではなく応接室へと招かれ、侍女に出されたお茶を飲みながら待っていると、やがてレオが顔を出す。

 彼も、今日はいつもよりも正装に近い。上質のフロックコートを着こなしていて、大人と変わらないくらいキリっとしている。

 レオは笑顔で父と握手をし、了承を受けて今後の話をしはじめた。

 レオと父の話が終わったところで、私はレオを手招きし、父に聞こえないように背伸びして口を耳元に寄せ、小声で囁く。

「本当に婚約がまとまっちゃいそうだけど、いいのね?」

 レオの頬に赤みが差す。が、彼は直ぐにそっぽを向いてしまった。

「おまえだって了承しただろう? それとも嫌なのか?」

「別に? レオを守るためならいくらでも……だけどさ。でも、兄弟と結婚するみたいでなんか変な感じ」

「そうか……」

 なぜかレオが肩を落としている。一体どうしちゃったんだろう。

「レオ、お腹空いてる?」

「……どうしておまえは食べ物のことばかりなんだ」

「いや、だって。お腹空いてたら元気でないでしょう」

 何を問われているのか分からない、という顔で見つめると、レオの呆れたような声が降ってくる。

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