小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「レオ様、陛下がお呼びです」

 しばらくすると、侍従がレオを呼びにやってきた。
 そういえば、陛下の執務のお手伝いをするとか言っていたんだったね。

「後でいくと陛下に伝え……」

「いいよ、レオ。行きなよ。私はもう帰るから」

 レオが、そちらを遅らせようとするので、私は慌てて立ち上がる。約束もなくやってきた私のせいで、陛下をお待たせするなんてとんでもない。

「だが……」

「リンネは僕が馬車まで送っていくから、レオは行きなよ」

 レオは渋ったが、クロードにそう言われて、諦めたように立ち上がった。

「分かった。クロード頼むな。……気を付けて帰れよ」

 そう言い、名残惜しそうに部屋を出ていく。

「やれやれ、過保護なもんだ」

 クロードはくすくす笑っていたが、いつもよりも表情は冴えない。彼は彼で、私のもたらした話がショックだったのだろう。

 私とクロードも、その後すぐに部屋を出た。

「そういえば、リンネの侍女には控えの間に行くように言っておいたよ」

「え? ああ! そうだ、エリーを馬車に置いてきちゃったんだ」

「忘れてたの? 可哀想に、ひどく狼狽してたよ」

 どうやらクロードは、私を捜してオロオロしているエリーに気が付き、控えの間に行くように指示を出してくれてから、私を捜しに来てくれたらしい。

 相変わらずの気遣い屋さんで頼りっぱなしだ。

「ありがとう、クロード」

 改めて感謝の意を伝えると、クロードもふっと表情を緩めた。

「……さっきは悪かったね、リンネ。脅すようなこと言って」

「ううん。私だって他の人が言っていたらきっと疑うと思う。うさん臭いし、騙されてるんじゃないかって思う。……でも、本当なの。誰とは言えないけど、絶対に信頼できる人なの」

「うん。分かったよ」

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