小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 実際、クロードは納得などしていないのだろうけれど、私の手前かそう言ってくれた。
 クロードはそういうところがある。いい感情も悪い感情も、自分の中で消化しようとするところ。もしかしたらそれは、まだ少年だったころからレオを守るために自分の気持ちを押し殺してきた彼の処世術だったのかもしれないけれど。

「クロードは平気?」

「なにが?」

「レオの魔法陣が悪魔を呼び出すものだったってこと。もちろん当人であるレオだってショックだろうけど、支え続けているクロードのほうがもっとショックじゃない?」

 クロードがはっとしたように目を見開く。内心を探られたことに対する怯えがそこには見えた。

「……僕はなんの傷も負っていない。辛いのはレオだ」

「痛みが無いから辛くないなんてことないでしょう? むしろ自分のことじゃないから辛いときだってあると思う。私だって……」

 代わってあげられるなら、レオの魔法陣全部引き受けてあげたいくらいだ。
 どうしてレオに、こんなに困難が降りかからなきゃならないんだろう。幼いころに殺されかけただけでも十分辛いのに、今また死を目の前にしなきゃならないなんて。
 
 助けてあげたいのになにもできないもどかしさは、私が一番感じている。クロードだって、魔法陣の解明やいろいろな手助けはできているだろうけれど、決定的な解決策を見いだせないことに苦しんでいるに決まっている。

 そしてなにより辛いのは、レオが半ば受け入れているような態度だったことだ。あんなすべてをあきらめて受け入れているような顔、見たくなかった。

「……レオに諦めてほしくなんてないよ……!」

 じわりと涙がにじむ。おかしいな、最近涙腺が弱い。これもレオのせいだ。

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