逢いたくて・・・今~和弘side~
それから、1ヶ月。律子さんとは1度も会っていない。会社で顔を合わすことはあっても、同僚以上の態度は出さなかった。律子さんにとっては、痛くも痒くもないのだろう。それが、プライドを傷つけられてはいたが、辛くはなかった。

今日は、7月7日、七夕。香耶乃との出会い記念日だ。香耶乃、そんなことは君は忘れて、新しい人生を歩み始めているのだろうか。それとも、僕のことがまだ心の片隅にでもあるのだろうか。

定時のベルを聞いて、会社を出る。香耶乃・・香耶乃・・・僕にもう一度だけ、チャンスをくれないだろうか。スマホで香耶乃をコールする。

ワンコールで、香耶乃が出た。

「和・・・弘?ほんとう・・・に?」

かすれた声がする。ずっと愛してきた、変わらずに愛してきた、香耶乃の可愛い声。

「ああ・・・こんなことを言うのは図々しいと思うんだけど。今日は」

「私たちの3回目の記念日、よね?」

香耶乃の潤んだ声がする。

「逢えない・・・かな。香耶乃がよかったら、だけど。そっち、行っていい?」

「逢いたい・・・今すぐ逢いに来て」

「行くよ。15分で着く」

雨の中をかけ出した。傘なんて、邪魔だ。放り出して、走っていく。分かったよ、僕。あのとき、許しを乞えばよかったんだ。なんで、香耶乃のことを信じられなかったんだろう。2人の絆の強さに誇りを持てなかったんだろう。

びしょびしょになって、香耶乃のアパートに着いた。

「・・・和弘、その格好」

と言う香耶乃の唇を自分の唇でふさいだ。そして、ぎゅっと抱きしめて、ずっと離さずにいたら。

「和弘?」

「ごめん、香耶乃まで、びしょびしょにしちまった」

「それはいいんだけど・・・」

僕は、まっすぐに香耶乃の目を見て言った。

「愛してる。僕の一番大切な人は香耶乃だけだ。それなのに、ごめんな、傷つけて。僕は一度だけ・・・。」

ぶん、ぶん、ぶん。香耶乃はかぶりを振って言った。

「この1ヶ月、ずっと、和弘のことを思ってた。逢いたい・・・って思ってた。その和弘がここにいる。嬉しい」

茅野が微笑んだ。大好きな、大好きな、香耶乃の微笑みだ。もう1度、優しくキスした。

「この先も、ずっと、僕と一緒にいてくれないか。結婚、してください」

香耶乃が目を見開く。そして、ぷっ、と笑って。

「このタイミングで、それ、言う?そんな格好で・・・1ヶ月、逢ってなくて」

「そっか・・・でも、気持ちが、こう、盛り上がってきて。今しかない、って思ったんだ・・・答えは?」

「よろしくお願いします」

「いやったぁ・・・・は~っくしょん!」

「いやだ、和弘、風邪ひいた?シャワー浴びて、服着替えて?」

「香耶乃もね。一緒に浴びようか」

「そだね」

香耶乃・・・もう2度と君を泣かせないよ。一生、君を守ってみせる。もう、他の女にふらついたりしない。君と一緒にずっと微笑って生きて行きたいんだ。

☆Fin☆
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