花野くんの溺愛は密室で。
たどり着いた先はいまは使われていない教室、空き教室。

ガラガラと音がする扉を開けて中に入ると私よりも先に来ていた生徒と目が合って、毎日のことなのに心臓がとくんと跳ねる。



「 結那(ゆな)」
「……花野くん」




たくさんの机があって、いまでも授業を受けることができるんじゃないかと思うほど綺麗で空き教室とは思えない。

その空き教室でくつろいでいるのは、真面目で完璧な花野くん。
ーー私の彼氏の花野くん。



床に座っている花野くんが長い脚を伸ばして私を見ている。




「腹減った」
「あっごめん」





‪ まさか見とれてました、なんて言えないから私は花野くんのとなりに座って、彼にお弁当を渡す。

私のお弁当よりも一回り大きいお弁当箱を「ありがとう」と言って受け取った花野くんはつかれた、と大きなため息をついた。
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