花野くんの溺愛は密室で。
「そりゃそうだよ。あんなに猫かぶりしてたら」
「猫かぶりって。もっと言いかたあるでしょ」




「猫かぶりの他に言いかたなんてないよ」という言葉を飲み込んで、私は授業中のことを思い出していた。

床に座って、足を伸ばして、時に組んでいる彼とさっきの彼は大きく違うのだからつかれるに決まっている。



「だって猫かぶりだもん」
「結那もそのほうが良いんでしょ?」



意地悪な顔で私の顔を覗き込む。その顔ももちろんさっきとは大違いだ。そのほうがいいに決まっているけれど、素直に認めたくない。

花野くんを独り占めできるからこっちのほうがよいけれど、きっと彼はそれをわかって聞いている。




腹減った、と言いながら彼はすぐにご飯は食べない。理由は……。



「あれ?今日はいいの?」
「……良くない」
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