乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版
【春遠からじ】
時は、1988年7月1日のことであった。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
ゆめいろ市から家出して放浪をつづけている16歳の私は、JR鹿児島本線の各駅停車の電車に乗って旅をしていた。
電車の窓に、戸畑八幡間の工場群が映っている。
16歳の私は、前日まで下ノ関に滞在していた。
その時に出会った人が私に『お前、ここへ行け。』と言うてメモ用紙を渡した。
私は、メモ用紙に記載されているある場所へ行くために電車に乗って旅に出た。
時は午後2時過ぎであった。
JR戸畑駅で電車を降りた私は、渡し船に乗って若松区へ向かった。
ところ変わって、若松区桜町にある商店街の露地裏にて…
たどり着いた場所は、こじんまりとした洋食屋さんであった。
私は、おそるおそる洋食屋さんのとびらを開いて店内に入った。
店に入った私は、『ごめんください。』と言うて店の人を呼んだ。
「ごめんください…ごめんください…」
「はーい。」
奥から、女性の声が聞こえた。
その後、のれんの奥から女性主人・保岡ひろこ(以後、ひろこ姐はんと表記・やすおかの姐はんと表記する場合あり)が出てきた。
「どちらさまでおますか?」
「あの~、保岡屋はこちらでおますか?」
「保岡はうちでおますが、あんたは誰やねん!?」
「私は、下ノ関である人からの紹介でここへ来ました。」
「あっ、そうなのぉ~」
ひろこ姐はんは、ものすごくめんどくさい表情で客席のイスに座ったあと、あつかましい声で私に言うた。
「あんた、トシなんぼ!?」
「はっ?」
「トシなんぼ!?」
ひろこ姐はんに怒鳴られた私は、心の中でムッとなった。
それでも私は『16歳です。』と答えた。
ひろこ姐はんは、私に怒った口調で言うた。
「16歳のコはみなコーコーに通っているのよ…今の時間はコーコーにいる時間でしょ…こななところでプラプラせんと、コーコーに戻ったら!?」
ひろこ姐はんは、高校に行っていない私にボロクソに言うたあと、大きくため息ついた。
ひろこ姐はんは、なにをコンキョにそななことを言うたのか?
ひろこ姐はんは、中学卒業して大都市圏にジョウラク(都へのぼること)した。
ジョウラクした都市(まち)で就職して、働きまくった。
高校に行っていないのをひたすらガマンして働きまくった…
そして、小さいけどジブンのお店を持つことができた…
私は、ひろこ姐はんはそうした苦労をしながら生きてきた人だから、理解できる。
だか、ひろこ姐はんが想ったことをズケズケと言うたけん、私は怒っている。
私は、故人が遺したユイゴンにしたがってアメリカ合衆国の学校教育を受けた。
4年制のハイスクールの1年生までは、アメリカ合衆国の寄宿学校で学校生活を過ごした。
学校の勉強と資格取得試験だけの学校なので、学校行事なんかまったくなかった。
ロングバケーション中は、社会奉仕活動ばかりをしていた。
せやけん、日本の高校生たちのことはまったく知らない…
4年制ハイスクールの1年生を終えたばかりの頃、卒業生の親が『親もとから学校へ通えないコはかわいそうだ。』とか『楽しい時間がないのはイヤだとは想わないのか?』などとあつかましく言うたけん、日本の高校に転学しただけ…
せやけん、ゆめいろ市の高校をほかした。
ひろこ姐はん、生ぬるい表情を浮かべている私になおもあつかましく言うた。
「坊や!!坊やのドーキューセーのコたちはコーコーに通っているのよ!!うちは坊やにコーコーへ行きなさいといよんよ!!」
私は、ひねた声でひろこ姐はんに言うた。
「なにをするためにコーコーへ行くのですか?」
ひろこ姐はんは、怒った声で私に言うた。
「なにをするためって、楽しい時間を過ごすために行くのでしょ!!」
私は、ますますひねた声でひろこ姐はんに言うた。
「楽しい時間って、なんやねん?」
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で私に言うた。
「楽しい時間と言うたら、夏休み冬休み春休み…土曜半休・日曜定休を言うのよ!!」
「あんたの言う楽しい時間って、その程度しかしらないのですか?」
私は、ひろこ姐はんに口答えをした。
ひろこ姐はんは、震える声で『ホンマにひねたコねぇ…あんたの親は教育の仕方が悪いみたいねぇ~』と言うて大きくため息ついた。
私は、ますますひねた表情を浮かべた。
ひろこ姐はんは、よりあつかましい声で私に言うた。
「きょうは7月1日よね…あと19日で楽しい楽しい夏休みが始まるわねぇ~」
楽しい楽しいって、あつかましく言うんじゃねぇよ…
私のガマンは、限度を超えようとしていた。
ひろこ姐はんは、なおもあつかましい声で私に言うた。
「坊やと同い年のコたちは、今ごろ夏休みの計画を立てている頃よ!!」
せやけん、なにが言いたいねん…
私にゆめいろ市へ戻れと言いたいのか?
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で私に言うた。
「おとなりさんの息子さんは、来週の4日から修学旅行でカリフォルニアへ行くのよ…お向かいの娘さんは、今月末に関釜フェリーに乗って韓国へ修学旅行へ行くのよ!!坊やのコーコーも修学旅行へ行くのでしょ!!」
ふざけんなよ…
私は、ひろこ姐はんに背中を向けて店から出て行こうとした。
そしたらひろこ姐はんは『待って!!』と言うて私を止めたあと、どこへ行くのかと聞いた。
「坊や、どこへ行くのよ!?」
「はい?」
「これからどこへ行くのよ!?」
「どこって…ニュウカンですよ…」
「ニュウカン?」
「福岡の入国管理局です。」
「入国管理局…入国管理局へ何しに行くのよ!?」
「何しにって…不法滞在者のシンセイをしに行くのです…」
「不法滞在者…あんたの名前は、なんて言うのよぉ?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーです。」
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で言うた。
「坊や、それホンマの名前かしら!?」
「ホンマの名前ですよ…日本人の名前であるけど、日本国籍を保有していません。」
「どういうことやねん?」
「せやけん、日本人の名前だけどホンマに日本国籍がないんです…ホンマにホンマです…」
ひろこ姐はんは、ふてくされた表情で『わかったねん…』と言うた。
このあと、私はひろこ姐はんと一緒に外へ出た。
それから100分後のことであった。
ところ変わって、小倉北区日明(ひあかり)にあるオレンジの三角屋根の特大倉庫にて…
ひろこ姐はんは、シャッターの横にあるアルミドアのカギをあけて、ドアをあけた。
その後、私はひろこ姐はんと一緒に中に入った。
倉庫の中は、ものすごく広い…
収納されている荷物は、全くない…
うんと右の端に、たたみ6畳がしかれている。
たたみの上には、ちゃぶ台とおふとんだけが置かれている。
たたみの横に、アルミの流し台が置かれている。
流し台の下の棚に、工具類が入っているケースが置かれている。
ひろこ姐はんは、私に『明日からここで寝泊まりしなさい…明日からここで働きなさい…』と言うて、明日からする仕事の内容を説明した。
明日からする仕事は、料理屋で使うしいたけを栽培しているキンショウブロックの2度切りぜんとばしである。
キンショウブロックに残っている実と切れ端を全部切ってキレイにしたあと、ホースの水でセンジョウする…
それだけであった。
とりあえず、仮住まいと仕事を確保することはできた。
この日は、身体がひどく疲れていたので夜9時に寝た。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
ゆめいろ市から家出して放浪をつづけている16歳の私は、JR鹿児島本線の各駅停車の電車に乗って旅をしていた。
電車の窓に、戸畑八幡間の工場群が映っている。
16歳の私は、前日まで下ノ関に滞在していた。
その時に出会った人が私に『お前、ここへ行け。』と言うてメモ用紙を渡した。
私は、メモ用紙に記載されているある場所へ行くために電車に乗って旅に出た。
時は午後2時過ぎであった。
JR戸畑駅で電車を降りた私は、渡し船に乗って若松区へ向かった。
ところ変わって、若松区桜町にある商店街の露地裏にて…
たどり着いた場所は、こじんまりとした洋食屋さんであった。
私は、おそるおそる洋食屋さんのとびらを開いて店内に入った。
店に入った私は、『ごめんください。』と言うて店の人を呼んだ。
「ごめんください…ごめんください…」
「はーい。」
奥から、女性の声が聞こえた。
その後、のれんの奥から女性主人・保岡ひろこ(以後、ひろこ姐はんと表記・やすおかの姐はんと表記する場合あり)が出てきた。
「どちらさまでおますか?」
「あの~、保岡屋はこちらでおますか?」
「保岡はうちでおますが、あんたは誰やねん!?」
「私は、下ノ関である人からの紹介でここへ来ました。」
「あっ、そうなのぉ~」
ひろこ姐はんは、ものすごくめんどくさい表情で客席のイスに座ったあと、あつかましい声で私に言うた。
「あんた、トシなんぼ!?」
「はっ?」
「トシなんぼ!?」
ひろこ姐はんに怒鳴られた私は、心の中でムッとなった。
それでも私は『16歳です。』と答えた。
ひろこ姐はんは、私に怒った口調で言うた。
「16歳のコはみなコーコーに通っているのよ…今の時間はコーコーにいる時間でしょ…こななところでプラプラせんと、コーコーに戻ったら!?」
ひろこ姐はんは、高校に行っていない私にボロクソに言うたあと、大きくため息ついた。
ひろこ姐はんは、なにをコンキョにそななことを言うたのか?
ひろこ姐はんは、中学卒業して大都市圏にジョウラク(都へのぼること)した。
ジョウラクした都市(まち)で就職して、働きまくった。
高校に行っていないのをひたすらガマンして働きまくった…
そして、小さいけどジブンのお店を持つことができた…
私は、ひろこ姐はんはそうした苦労をしながら生きてきた人だから、理解できる。
だか、ひろこ姐はんが想ったことをズケズケと言うたけん、私は怒っている。
私は、故人が遺したユイゴンにしたがってアメリカ合衆国の学校教育を受けた。
4年制のハイスクールの1年生までは、アメリカ合衆国の寄宿学校で学校生活を過ごした。
学校の勉強と資格取得試験だけの学校なので、学校行事なんかまったくなかった。
ロングバケーション中は、社会奉仕活動ばかりをしていた。
せやけん、日本の高校生たちのことはまったく知らない…
4年制ハイスクールの1年生を終えたばかりの頃、卒業生の親が『親もとから学校へ通えないコはかわいそうだ。』とか『楽しい時間がないのはイヤだとは想わないのか?』などとあつかましく言うたけん、日本の高校に転学しただけ…
せやけん、ゆめいろ市の高校をほかした。
ひろこ姐はん、生ぬるい表情を浮かべている私になおもあつかましく言うた。
「坊や!!坊やのドーキューセーのコたちはコーコーに通っているのよ!!うちは坊やにコーコーへ行きなさいといよんよ!!」
私は、ひねた声でひろこ姐はんに言うた。
「なにをするためにコーコーへ行くのですか?」
ひろこ姐はんは、怒った声で私に言うた。
「なにをするためって、楽しい時間を過ごすために行くのでしょ!!」
私は、ますますひねた声でひろこ姐はんに言うた。
「楽しい時間って、なんやねん?」
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で私に言うた。
「楽しい時間と言うたら、夏休み冬休み春休み…土曜半休・日曜定休を言うのよ!!」
「あんたの言う楽しい時間って、その程度しかしらないのですか?」
私は、ひろこ姐はんに口答えをした。
ひろこ姐はんは、震える声で『ホンマにひねたコねぇ…あんたの親は教育の仕方が悪いみたいねぇ~』と言うて大きくため息ついた。
私は、ますますひねた表情を浮かべた。
ひろこ姐はんは、よりあつかましい声で私に言うた。
「きょうは7月1日よね…あと19日で楽しい楽しい夏休みが始まるわねぇ~」
楽しい楽しいって、あつかましく言うんじゃねぇよ…
私のガマンは、限度を超えようとしていた。
ひろこ姐はんは、なおもあつかましい声で私に言うた。
「坊やと同い年のコたちは、今ごろ夏休みの計画を立てている頃よ!!」
せやけん、なにが言いたいねん…
私にゆめいろ市へ戻れと言いたいのか?
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で私に言うた。
「おとなりさんの息子さんは、来週の4日から修学旅行でカリフォルニアへ行くのよ…お向かいの娘さんは、今月末に関釜フェリーに乗って韓国へ修学旅行へ行くのよ!!坊やのコーコーも修学旅行へ行くのでしょ!!」
ふざけんなよ…
私は、ひろこ姐はんに背中を向けて店から出て行こうとした。
そしたらひろこ姐はんは『待って!!』と言うて私を止めたあと、どこへ行くのかと聞いた。
「坊や、どこへ行くのよ!?」
「はい?」
「これからどこへ行くのよ!?」
「どこって…ニュウカンですよ…」
「ニュウカン?」
「福岡の入国管理局です。」
「入国管理局…入国管理局へ何しに行くのよ!?」
「何しにって…不法滞在者のシンセイをしに行くのです…」
「不法滞在者…あんたの名前は、なんて言うのよぉ?」
「コリントイワマツヨシタカグラマシーです。」
ひろこ姐はんは、ますますあつかましい声で言うた。
「坊や、それホンマの名前かしら!?」
「ホンマの名前ですよ…日本人の名前であるけど、日本国籍を保有していません。」
「どういうことやねん?」
「せやけん、日本人の名前だけどホンマに日本国籍がないんです…ホンマにホンマです…」
ひろこ姐はんは、ふてくされた表情で『わかったねん…』と言うた。
このあと、私はひろこ姐はんと一緒に外へ出た。
それから100分後のことであった。
ところ変わって、小倉北区日明(ひあかり)にあるオレンジの三角屋根の特大倉庫にて…
ひろこ姐はんは、シャッターの横にあるアルミドアのカギをあけて、ドアをあけた。
その後、私はひろこ姐はんと一緒に中に入った。
倉庫の中は、ものすごく広い…
収納されている荷物は、全くない…
うんと右の端に、たたみ6畳がしかれている。
たたみの上には、ちゃぶ台とおふとんだけが置かれている。
たたみの横に、アルミの流し台が置かれている。
流し台の下の棚に、工具類が入っているケースが置かれている。
ひろこ姐はんは、私に『明日からここで寝泊まりしなさい…明日からここで働きなさい…』と言うて、明日からする仕事の内容を説明した。
明日からする仕事は、料理屋で使うしいたけを栽培しているキンショウブロックの2度切りぜんとばしである。
キンショウブロックに残っている実と切れ端を全部切ってキレイにしたあと、ホースの水でセンジョウする…
それだけであった。
とりあえず、仮住まいと仕事を確保することはできた。
この日は、身体がひどく疲れていたので夜9時に寝た。