乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版
第2話・さらばシベリア鉄道

【愛の終着駅】

信州から逃げた私と施設長さんは、高松東港でジャンボフェリーを降りたあと、タクシーに乗って国鉄高松駅へ向かった。

私と施設長さんは、高松駅でなみさん(当時20歳・高松市内のパーマ屋さんで見習いで働いていた)と合流した。

なみさんは、かつて同じ施設で私と一緒に暮らしていたので、なにかと世話になった。

「先生、よーくん…」
「なみちゃんお待たせ。」
「それじゃあ、行こうか…」

5つの私は、施設長さんとなみさんと一緒に特急南風1号に乗って高知駅へ向かった。

朝10時半頃、列車は高知駅に到着した。

列車を降りた3人は、おむかえの車に乗って桂浜へ向かった。

時は、午前11時半頃であった。

ところ変わって、桂浜の近くにある国民宿舎の20畳の和室の宴会場にて…

宴会場には、溝端屋のダンナと田嶋と小林と山岡と高知県内にある取り引き先の会社の社長さんたち40人がいる。

一行は、コンパニオンさんと一緒にはし拳(土佐のお座敷遊び)を楽しんでいる。

はこ膳の上には、土佐鶴(日本酒)とハランボ(かつおの大トロの部分)の塩焼きと酢の物とあえ物が置かれている。

溝端屋のダンナと田嶋と小林と山岡は、コンパニオンさんたちと社長さんたちがはし拳遊びを楽しんでいる様子を満面の表情で見つめている。

そこへ、女中さんが宴会場に入って来た。

女中さんは、溝端屋のダンナに耳打ちで伝言を伝えた…

「ああ、さよか…ほな、行くわ…」

女中さんから伝言を受けた溝端屋のダンナは、田嶋と小林と山岡と一緒に宴会場を出て、部屋へ戻った。

ところ変わって、溝端屋のダンナが宿泊している部屋にて…

部屋の中には、ダンナと田嶋と小林と山岡と施設長さんがいる。

5つの私は、なみさんと一緒に浜辺にいて、海をながめている。

今回の一件を聞いたダンナは、ソートーご立腹になったので、施設長さんを怒鳴りつけた。

「眞規子はんの気だるい気持ちが原因でよーくんがあぶない目に遭ったと言うことがまだわかってへんみたいやな!!」

ダンナに怒鳴られた施設長さんは、シュンとした表情で言うた。

「すみませんでした…」

端にいる小林が、ものすごく怒った口調で施設長さんを怒鳴りつけた。

「コラ!!オドレはワシをおちょくっとんか!!」
「小林…」

小林を止めたダンナは、施設長さんにたしなめる声で言うた。

「もうええ…眞規子はん、よーくんのもとへはよ行ってあげなさい。」

施設長さんにどやされた施設長さんは、私となみさんが待っている浜辺へ向かった。

それから数分後に、ダンナと田嶋と小林と山岡とあとから入ってきた番頭はんと数人の丁稚(でっち)どんたちで密談を始めた。

「溝端屋。」
「小林。」
「わて、こない思ったけど…よーくんが施設に戻ったら、また同じことがおきると思いまんねん。」

小林が言うた言葉に対して、田嶋は不気味な声で『そのようだな…』と答えた。

ダンナは、番頭はんに私を日本から出国させると言うて、例のプロジェクトを実行せよと命じた。

そして、翌朝6時過ぎ…

私は、施設長さんとなみさんと一緒に再び旅に出た。

高知空港から朝イチの東亜国内航空機(日航)に乗って、福岡空港まで行った。

そこからソウルキンポ空港行きのアシアナ航空機に乗って、出国した…

その後、ソウルキンポ空港から第三国経由で中国に入国した。

私は、その間ずっと施設長さんのふくよかな乳房にすがりついていた。
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