乳房星(たらちねぼし)・ドラマノベル版

【よせばいいのに】

9月24日の昼前のことであった。

たつろうさんの実家に、てつろうが大学院在籍時にお世話になった教授夫婦がたずねてきた。

大広間で政子六郎夫婦とてつろうと教授夫婦の5人が話し合いをしていた。

てつろうは、教授夫婦に頭を下げて大学院の研究所へ行かせてほしいとジキソした。

「教授!!お願いでございます!!研究したいテーマが見つかったので、研究所へ行かせてください!!…(長女)さんとサイコンして、ムコヨウシに入ります!!お願いします!!」

教授は、過度にやさしい声でてつろうに『まあまあ』と言うた。

しかし、ひどくコーフンしているてつろうは教授夫婦に研究所へ行かせてほしいとコンガンしまくった。

「お願いです!!研究所へ行かせてください!!」

コーフン状態のてつろうに対して、教授は過度にやさしい声で言うた。

「多賀くんの気持ちはよくわかるけど、事情が変わったんだよ。」

奥さまは、事情が変わった理由をてつろうに説明した。

「あのねぇ、主人は今月いっぱいを持って研究所の所長を退任することになったのよ。」
「退任…なんで退任するのですか!?」
「なんでって、家庭の都合が悪くなったから退任するのよ。」
「(拍子抜けた声で言う)なんでそなな勝手な理由で退任するのですか?」

政子は、つらそうな声でてつろうに言うた。

「教授夫婦は、家庭の都合が悪くなったから研究所の所長を退任するのよ…理由はそれだけよ。」
「それじゃあ、納得が行かんねん。」

教授の奥さまは、勝手な理由で教授が研究所をやめることになったことをてつろうにわびたあと、理由を説明した。

「次女のムコはんが『うちへおいで』と言うたけん、次女の家へ移ることにしたんよ。」
「それはなんでや?」
「なんでって、ローゴの楽しみをマンキツしたいから、研究所をやめるのよ。」

ローゴの楽しみをマンキツしたいから大学院の研究所をやめるなんて勝手すぎるわ…

てつろうは、腹の中で怒った。

政子は、てつろうにあつかましい声で言うた。

「教授夫婦は、次女夫婦の孫ちゃんしか楽しみがないのよ。」

教授夫婦は、てつろうにこう言うた。

「(長女)は、今週の金曜日に厄が明けるのだよ…結婚にしばられたくないけん大学病院の女医はんしよったけど、やっぱりお嫁に行くと訣意(けつい)したんや…」
「家のムコはんは、(次女のムコはん)くんだけでジューブンと主人はいよんよ…それに、この家のリフォーム代を出すといよんよ…ご両親もおにいたちが行方不明になったけん、心細いといよんよ…」

政子は、てつろうの頭を右手でつかんで『お願いします。』と言うて教授夫婦に頭を下げた。

教授夫婦は、過度にやさしい声で『ほな、決まりやねぇ』と言うて、未払いのリフォーム代を全額負担すると言うた。

それから1時間後、教授夫婦は自己満足の表情で家から出発した。

てつろうは、教授夫婦の長女とサイコンすることになった。

同時に、10月2日より尾鷲市の市役所に契約職員として再就職することが決定した。

しかし、あずさは政子六郎夫婦になにも言わずにふたりの子どもを連れて家出した。

和子は『男いらん』と言うてコンカツをやめた。

政子六郎夫婦は、てつろうがサイコンして市役所に再就職できたからもういいかと言うてノンキにかまえた。

たつろうさんの実家は、それでめでたしめでたしと言うけど、ホンマにそれでええんかいのぉ~
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