わらわないでほしいよ
上手く「好き」を伝えられる自信なんて、全然ないけれど、美穂みたいにちゃんと彼氏に愛を伝えられるような女の子にはなりたい。
そう言い聞かせるように、黒いリボンがついた可愛いワンピースを着て、髪もいつもより綺麗にとかす。
鏡の前で深呼吸をしてから、わたしは家を出て彼の元へ向かう。
「よし、来たな!」
待ち合わせ場所に立っていた和真(かずま)は、わたしを見てニッと笑った。
「お待たせ……」
その笑顔につられて、わたしもニコリと笑いかけて言った。
「ほんと、どんだけ待たせんだよ。この、のんびり屋」
いたずらっぽい笑顔で、わたしの頭をコツンと軽く叩く彼。
「違うよ、ただ一生懸命なんですー!」
あ、また素直になれない時に出た台詞が出ちゃった。
……やっぱり美穂とは大違い。