Seven...YUKI


「はい。お疲れ様でした」



「お疲れ様」



首に巻いていたタオルで汗を拭きながら
笑顔を向けるおばさんに、
お辞儀をしてその場を去った。










あたしは桜愛莉(サクラ アイリ)。



小さい頃、
児童養護施設・桜園の田中(タナカ)園長に
拾ってもらったのをきっかけに
今もそこで暮らしている。



中学生を迎えるこの年になっても
実の親は分からないまま。



きっと捨てられたんだろうな…。



園長や施設の先生達は何も言わないけど
薄々そう感じていた。



施設にいる子供達なんて
みんなそんなもの。



施設の前に捨てられてたり、
育てられなくなった親が
わざわざ預けにきたり…。



愛莉っていうのはきっと本名。



拾った時にくるんであったタオルに
【愛莉】って刺繍されてあったって
園長が言ってた。



でも、苗字までは分からない。



施設の子にも【桜】って苗字の子は
たくさんいる。



苗字が分かって入ってくる子もいるけど、
大抵は名前も分からない子ばかり。



だから桜園の桜をとって苗字をつけてる。



今年中学に入学した私は友達と
遊びたいお年頃。



だけど施設のお小遣いなんてほんの少し。



でも中学生はバイトをしちゃいけないから
毎週土曜日だけ施設の先生の知り合いの
お弁当屋さんで特別にバイトをさせて
もらってる。



でもこれがつらい。



土曜日は1日中立ちっぱなしだし、
汗はかくし…。



でももう3ヶ月ぐらい続いてるかな?



結構お給料もいいから…。



「夜なのに…暑いな」




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