Seven...YUKI


あたしは説明する先生を呆然と見つめる。



「指が動いたり、涙を流したりという
例も今までにあります。
死んでいたら…体は動きませんよね?」



「でも…」



「脳死を人の死と判断するかしないかは、
人それぞれによって違います。
心臓が動いている間は生きていて、
心臓が止まってしまえば死亡。
つまり、生と死の間。
脳死は…非常に難しい問題です」



黙り込んでしまったあたし。



先生はそんなあたしから光輝のお父さんと
お母さんに体を向けた。



「山村さん」



「は、はい…」



「…人工呼吸をしていても
いずれ心臓は停止します。
ですが、患者によっては脳死判定を
受けてから心臓が停止するまでの
期間に差があり、短いときもあれば、
10年、20年と人工呼吸で生き延び、
成長した方もおられます。
ですから…どうか…このままの状態が
続いたとしても…見守ってあげて下さい」



真剣にそう言う先生にお父さんと
お母さんは頭を下げた。



「はい…ありがとうございました」



そんなお父さんとお母さんに頭を下げると
先生は看護婦さんと一緒に部屋から
出て行った。



ドアの閉まる音だけが響いた病室。



あたしは光輝の手に触れた。



温かい…。

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