大好きだから、キミの前では笑っていたい。
◇友達と恋人の境界線
──臆病な心は、時に後悔を生み出す。
「華音、帰ろ」
鞄の中身を整理している横で、スマホを手にした秋が言う。
リュックサックのように背負われた鞄は、彼のいつものスタイルだった。
うん、と頷きその場に立ち上がった私の手を彼は当然のように掴んで優しく包み込む。
私と秋は、いつもこんな感じだ。
「付き合ってるの?」
からかい半分、本音半分で聞かれたのは指では数え切れないほど。
手を繋ぐことも、隣を歩くことも、寝落ち通話を毎日することも、私たちにとっては普通のことだった。
世間でいえば、私たちの関係性は所謂“友達以上恋人未満”に当てはまるのだろう。
付き合ってはいない、けどまるで幼なじみのようにいつもそばにいる、それが秋だった。
私の隣には、いつも秋がいて。
秋の隣には、私がいる。
それが、“当たり前”の日常だった。
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