大好きだから、キミの前では笑っていたい。
『……華音?』
「ごめん。なんでもない。ちょっと呼んでみただけ」
『なんだよそれ』
フッ、と笑う彼。
一言一言が愛しくて、このままずっと声を聴いていたいとすら思う。
『明日も早いし、もう寝ようぜ』
「……そうだね」
本音を言えば、もう少し話していたい。
けれど、それを言う権利は私にはないから、ここまで話せたことに感謝の気持ちを抱くほかなかった。
「おやすみ、秋」
『おやすみ、華音』
終わった会話。
だけど、終わることのない通話。
そんな矛盾が嬉しくて、私は幸せに瞼を下ろした。
闇の世界で聞こえた彼の寝息。
彼の寝息は、不思議と私を夢の世界に連れていく。
それはきっと、私が落ち着く“音”だから。
だんだんと遠のく意識の中で、彼の声が隣で聴こえるこの幸せをそっと噛み締めていた。