大好きだから、キミの前では笑っていたい。
◇交わらなかった恋模様
「その話、面白いね」
「だろ?」
「他にはないの?秋くんの話、もっと聞きたい!」
左隣から聞こえてくる愉しげな声。
その会話を聞きたくなくて、でも彼の声を聞いていたくて。
そんな矛盾の思いに出した結果に、無意識にため息がこぼれる。
一向に訪れない眠気に諦めて、木目を凝視する。
腕に額を当てたこの姿勢は、仮眠を取る際によく用いているため辛くはないのだが、鼓膜に響く音は私の胸を苦しいくらいに締め付けた。
ふたり分の笑い声がやけに耳に入る。
腕の隙間から見えたふたりの距離感に、どうしようもないくらいに心が暴れた。
隣のクラスなのに、勝手に入って。
先生に見つかって怒られちゃえばいいのに。
どす黒くなった心が、当人の届かぬところでズバズバと本音を口にする。