大好きだから、キミの前では笑っていたい。
私がどんな思いで、彼を想っていたか。
秋も秋だ。
私の気持ちなんか、ちっとも気づかずに恋愛相談なんかしてきて。
……本当に、ひどい。
酷いのに……、どうしてだろう。
心から、憎めない。
相手が本気で悪い子なら、嫉妬心丸出しで彼女を恨めたのに。
秋が本当に最低なヤツなら、こんな恋心さっさと捨てられたのに。
行き場のない思いに、私は眉を顰めるしかなかった。
愉快な声が、何度も何度も胸を締め付ける。
結局チャイムが鳴り終わるまで、彼女は秋のそばに寄り添うことになった。
寂しげに別れを告げる声が、鼓膜に響く。
「華音」
その声はすぐに私の大好きな優しい音に変わり、聞き慣れた三文字の名を口にした。
肩に触れたその指が切なくて、今にも涙が溢れてしまいそうだった。