大好きだから、キミの前では笑っていたい。
「そろそろ起きないと、授業始まるぞ」
「……ん」
ちいさく反応を示して、僅かに顔を上げる。
下唇をかみ締めて堪えた雫はこぼれ落ちることなく、いつもの景色を私に見せた。
──眩しい。
窓から差し込む光はそんなに強くないはずなのに、今の私にはとても輝いて見える。
思わず目を細めると、扉の開く音が背後で聞こえてきた。
誘われるように振り向けば、若い女性教員がそこにはいた。
気持ちを切り替えるように、深呼吸を繰り返す。
ゆっくりと息を吐いてみれば、少しずつ心が落ち着いているような気がした。
もう一度、瞼を下ろしてみる。
脳裏に浮かぶのは、無邪気に笑う秋の姿。その隣にモヤが浮かび上がったところで、私は目を開けた。
その先だけは、見れそうになくて。
まだ、その事実を受け止めきれない自分がいることもそうだけど。
すぐに別れるかも、なんて最低なことを考えている自分にはふたりの並んでいる姿なんて想像でも許されることではないだろうから。
背を向け離れて行く彼をそっと見つめてから、私は瞳を腕で覆った。