大好きだから、キミの前では笑っていたい。
「今日、ずっと変でごめんなさい……。祝福も、出来なくて……。迷惑もいっぱいかけちゃって……。好き、な人にこんなこと……。本当に最低だよね」
自虐するように萎んだ声で最後にそう告げると、後方から冷たい風が吹いてきた。
そこそこ強く吹いた風によって乱れた髪を直していると、ふいに目の前の彼が一歩こちらに近づいてくる。
掴まれた手首が開放されたと同時にその手が宙を彷徨う。
大きな手が触れた先は──、私の髪。
触り心地を堪能するように触れるその手つきは、懐かしいようで初めての気持ちを私に与えた。
「ありがとう、華音」
──その音は、今まで聞いた音の中で一番温かさを含んでいた。