大好きだから、キミの前では笑っていたい。
サマーベストの胸の辺りをやんわりと指先で掴み、また視線を足元に落とした。
……いや、落とそうとした。
だけど伸びてきた手に、それを阻止されてしまう。
肩に置かれた大きな手に思わず顔を上げると、「最後まで聞いてほしいんだけど」と彼は驚くべき事実を私に聞かせた。
「俺、華音のこと好きだったよ」
「…………えぇ!?」
「一年の頃だけどな」
予想だにしてなかった発言に、私は目を丸くする。
それはつまり、過去に一度両想いだった瞬間があったということだ。
「初めてだったんだよ。あんな風に話せたの」
「初めて……?」
「変にカッコつけたりせずに、素の状態で話せた女子なんて今までいなくて。華音のような素の自分で楽しく会話出来るヤツなんていなかったからさ」
「秋……」
初めて聞く彼の恋愛事情に、胸が熱くなっていく。