超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




「はい、ぜひ」


わたしの返事を聞いて満足そうに笑ってくれた。

その笑顔を見てつられて笑顔になった。



「遅くまでありがとう。またね」

「はい。気をつけてください」

「ね、最後にもういっかい」

「え?」



いきなり引き寄せられてすっぽりと空野さんの腕に包まれる。

それは一瞬ですぐに開放された。




「充電完了」


ウインクする姿はまさにアイドルだった。

不意打ちのハグにきっとわたしの顔は真っ赤だ。


それを笑って誤魔化す。




「体に気をつけて、撮影がんばってくださいね」

「うん、ありがとう」

「ドラマ楽しみにしてます」

「それは気合い入れないとね」



名残惜しい。

次はいつ会えるのか。


そういうことを思うことすら贅沢なのはわかっているけど、空野さんに会いたい気持ちはいつからかずっとある。




「おやすみ」

「おやすみなさい」


優しく笑って手を振ってから玄関のドアを開けて外に出て歩いていく。

すぐに闇に包まれ姿が見えなくなる。



アイドルなのは驚いたけど空野さんは空野さんだった。

これからも変わらず、仲良くしていきたいな。


ふと空を見上げると三日月がにっこりと笑っていた。




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