超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
◇シンデレラにはなれない
「雪乃ちゃん、そこもっと感情込めてゆっくりとしゃべっていいよ」
「ゆっくり……了解です」
文化祭が近づいてきて、劇の練習も通しや細かい修正などが中心になってきている。
もともと演技の経験なんて幼稚園のころのお遊戯会くらいしかないわたしは、みんなの足を引っ張ってばかり。
衣装もすごく素敵なものを作ってくれているのに、着て演技をすると衣装の少しの動きに気を取られたりしてしまう。
「いまから10分間、休憩にしましょうか」
文化祭実行委員兼監督の声でその場にしゃがみこむ。
……上手にできない。
「お疲れ」
しゃがみこんだわたしに視線を合わせるようにしゃがんだのは黒瀬くん。
王子様の衣装がよく似合っている。
「黒瀬くん、ごめんね……わたしだめだめだ……」
「全然。白川ががんばってると俺もがんばろうって思えるし」
黒瀬くんってけっこう熱いんだな。
演技も自然だし華がある。
「黒瀬くんに迷惑かけないようにがんばるね。自主練もしないと」
「俺も付き合うよ」
「え?」
「相手役がいたほうがいいだろ?」