超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。



「でも、そんなの迷惑じゃ……」

「おれがしたいって言ってるのに?」


真っ直ぐな視線を向けられてドキッと大きく音を立てた。

普段は優しくてほわほわしているのに、こうして強い瞳で有無を言わせない雰囲気をつくるのも上手い。


空野さんはやっぱりプロだ。




「あの、本当に下手くそなんですけど、よろしくお願いします……!」

「はい。喜んで」


にっこりと笑った空野さんは素敵な笑顔で一瞬見惚れてしまったけど、すぐに我に返って気合いを入れる。

人に見せられるくらいには演技をできるようにならなきゃ。


ちょうど店を閉める時間だったから、先に店を閉めてフロアで練習をする。

お母さんは二つ返事で承諾してくれた。



「台本見せて」

「どうぞ」


ひっそりと今日の仕事中にもカウンターの下でヒマがあれば見ていた台本を空野さんに渡す。

足を組んで集中して台本を読む姿は息をのむほどかっこいい。


テレビの裏側ではこんなふうに、台本を読んだり真剣に打ち合わせをしているんだな、と容易に想像がついた。




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