超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
海成くんの言葉に息が詰まる。
なにも声が出ない。言葉が出ない。
頭が真っ白になる。
「俺らはいま大事な時期なんだよ。一時の感情で、この大事な時期を潰すわけにはいかない」
そんなのわかってる。
芸能界とかテレビとかわからないわたしだけど、いま大注目で人気急上昇中の空野さんが大事な時期なのはわかる。
「あんたはそれを潰す可能性がある。颯のためを考えたら、どうすればいいか……わかるよな?」
空野さんのためにわたしがすべきことは……。
「……空野さんは、わたしが距離を置こうとすることを止めてくれました」
「それ、本気にしてんの?」
「わたしは、空野さんの言うことだけを信じます。だから、海成くんの言うことは……」
「なに、あんたって颯のこと好きなわけ?」
「……え?」
目を合わせられなかったけど、顔を上げて海成くんを見る。
好き?
わたしが、空野さんを?
そんなこと……あるわけないじゃん。
だって、空野さんはお客様でアイドル。
好きになっても報われない人。
報われたらだめな人。
「ちがっ……」
違う。
そう言いたいのに、言うことができない。
心が止めた。
否定を拒んだ。
わたし、空野さんのこと……?