超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「あ、電話だ。盛り上がってきたところだったのに」
「出てくださいよ」
「はーい」
空野さんは少し拗ねながら返事をして、スマホをタップして電話に出る。
こんなにゆっくりとお客様と話したのは初めてだったけど、すごく楽しいと思った。
「なに?え、もうそんな時間?うん、うん……いまから行く」
お友達と待ち合わせかな?
気が付けば1時間は経ってるし。
通話を切ってわたしを見る。
「名残惜しいけど、おれもう行くね。お会計お願いします」
「はい。コーヒー1杯で……」
「これで。おつりはいいよ」
「え、でも……」
「元気もらったからさ。タオルもありがとう。また来るね」
「あ、待ってくださ……」
わたしの止める声も空しくドアを開けて出て行ってしまう。