超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「ゆきちゃんを傷つけることは、たとえ海成でも許さない」
思いきり掴んだ胸倉を引っ張る。
絶対に許さない。
至近距離で睨んでから、手をパッと放す。
「……掴んで悪かった。けど、海成のこと許さないから」
もう目を合わせることはできなかった。
言い逃げするように楽屋から出た。
トイレに入り、スマホを見る。
やっぱりゆきちゃんからのメッセージはない。
電話をかけてみるけど出ない。
仕事中かもしれない。
《海成がひどいこと言ったみたいでごめん。気にしなくていいから》
一度送ってからまたメッセージを打ち込む。
《ゆきちゃんと話したいから、返事してほしい。電話がいやならメッセージでもいいよ》
お願い。
返事をしてほしい。
スマホを両手で握りしめる。
そろそろ戻らないといけない時間になり、一度楽屋に戻る。
「颯、あの……」
「大丈夫。本番はちゃんとするから」
「……うん」
いまは海成と話したくない。
今年で結成2周年になるけど、なんだかんだ小さな言い合いはあっても大きなケンカはなかった。
でも、このことに関してはおれも引きたくないんだよ。