超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
俺はアイドルでまだ19歳。
ありがたいことに子役時代からたくさんドラマや映画、舞台に出させてもらって、アイドルとしても求めてもらっている。
わかってる。知っている。
それでも、止められない気持ちがあることをおれは知った。
いまが大事な時期。
だけど、このあふれる気持ちもきっといまが大事な時期なんだ。
おれは全部零さない。
全部自分のものにして上へ行く。
それでこそ、おれの目指すスーパーアイドルだと思うから。
海成も事務所も同業者もファンの子も、みんなすきだよ。
だいすきだよ。
だから、選ぶことなんでできない。
する必要もない。
どれがいちばんなんて決めない。
全部いちばんだから。
「aozoraさん、スタンバイお願いします」
「はい」
返事をして歩き出す。
チラッと見えた海成の表情は暗い。
こんな海成はユニットを組んでから見たことがない。
「アオ」
おれの声に海成の空気がピリっとした。
後ろを歩いていた海成を振り返ると、俯きがちだった顔をゆっくりと上げる。