超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




俺はアイドルでまだ19歳。

ありがたいことに子役時代からたくさんドラマや映画、舞台に出させてもらって、アイドルとしても求めてもらっている。


わかってる。知っている。


それでも、止められない気持ちがあることをおれは知った。

いまが大事な時期。
だけど、このあふれる気持ちもきっといまが大事な時期なんだ。


おれは全部零さない。

全部自分のものにして上へ行く。


それでこそ、おれの目指すスーパーアイドルだと思うから。



海成も事務所も同業者もファンの子も、みんなすきだよ。
だいすきだよ。


だから、選ぶことなんでできない。
する必要もない。


どれがいちばんなんて決めない。
全部いちばんだから。




「aozoraさん、スタンバイお願いします」

「はい」


返事をして歩き出す。

チラッと見えた海成の表情は暗い。


こんな海成はユニットを組んでから見たことがない。




「アオ」



おれの声に海成の空気がピリっとした。

後ろを歩いていた海成を振り返ると、俯きがちだった顔をゆっくりと上げる。




< 138 / 400 >

この作品をシェア

pagetop