超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「勉強会のときに会ったのも、海で会ったのも、この前の文化祭のときのも、全部ソラでしょ。アイドルでしょ」
さっきドラマの話をしている時点で、黒瀬くんが会話に入ってきた時点で気づくべきだった。
けど、もうそこを悔やんだところでどうにもならない。
「……違うよ」
用意した否定の言葉しか言えない。
しっかり素顔を見ている黒瀬くんが気づかないわけがない。
でも、認めるわけにもいかないから。
「もう付き合ってる?」
「…………」
「あのとき以来、白川の雰囲気が変わった気がするしそうなのかなって思ってた。まさかアイドルとは思わなかった……」
「違うよ……違うから、ね」
黒瀬くんの口を両手で塞ぎ、言葉を無理やりに止める。
それしか言うことができない。
下唇を噛んで、黒瀬くんを見つめる。
驚いたような表情をしていたけど、いつもの表情に戻すとわたしの手をつかんで口から離す。
「……言えないよな」
ボソッとなにかを言ってから、わたしの頭を数回ぽんぽんとする。