超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




「大丈夫。だれにも言わない。俺はなにも知らないから。だから、そんな顔すんなよ」



切なげに笑って噛んでいる下唇を指でなぞる。

予想していなかった行動に唇を緩ませた。



「噛みすぎるな、傷になる」

「あ、うん……」

「……秘密だから」



耳元で囁かれた声にドキッとして、距離をとり耳を押さえる。

黒瀬くんは薄く笑ってから「教室戻るぞ」と歩き出した。


その後ろをついて歩く。


黒瀬くんは言いふらすような人ではない。

でも、こんなふうにほかの人に気づかれる可能性はこれからもあるのかもしれない。



気をつけなきゃ。

軽率な行動は避けなきゃ。


いまは、仕事が忙しくて会えるときが少ないからリスクも少ない。

颯くんとはいまみたいな感じで付き合っていったほうがいいのかもしれないね……。


胸がぎゅっとなる。


……寂しいなぁ。





< 192 / 400 >

この作品をシェア

pagetop