超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
春乃さんの様子からもそこまで重傷ではないようで安心する。
ホッとしながらついて行くと、制服姿の黒瀬くんが見えた。
まだいる……。
黒瀬くんの存在にむっとしながらも、隣を見ると正幸さんがいた。
「お、空野」
「正幸さん。貼り紙かっこよかったです。ヒーローですね」
「照れるじゃねぇか。一杯いこうか」
「おれ、まだいちおう未成年です」
正幸さんもフレンドリーに話してくれて、久しぶりに話せて楽しい。
でもゆきちゃんがいない。
「あの、ゆきちゃんは……」
「ごめんね、お待たせ……え?」
「えっ!?」
ぽかんとするゆきちゃんを見て、思わず大きな声を出してしまい周りから見られる。
すぐに「すみません」とぺこっと頭を下げてから、もう一度ゆきちゃんを見る。
左手が白い三角巾で吊られている。
歩き方もなんだかひょこひょこといつもと違った。
「白川」
黒瀬くんが名前を呼んで支えようと手を伸ばしたけど、それよりも早く近づいてゆきちゃんの腰に手を回す。
「おれが支えるから」