超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
黒瀬くんを見ると、表情を変えない。
ゆきちゃんの同級生だからおれより2個下なはずなのに、見上げる身長差や余裕ある顔にむっとする。
ゆきちゃんは混乱しているようで、目を丸くして瞬きを繰り返している。
けど、おれの服の裾をぎゅっと握ってくれたから、それによって少し安心する。
「ゆきちゃんについていてくれてありがとう」
「……別に」
相変わらずおれには愛想ない。
というか、たぶんゆきちゃんにだけ愛想あるんだろうな。
見る目はあるけど、もうゆきちゃんはおれのだもんね。
心の中であっかんべーをする。
年下相手に大人げないかもだけど、正直おれだって焦ってる。
「薬受け取ってから帰りましょう。黒瀬くんもずっとついててもらってありがとうね」
「いえ」
春乃さんがニコニコしながら声をかけると、同じように微笑む黒瀬くん。
むぅ……。
いい顔してる……。
「それじゃあ、俺は帰りますね」
「え、送るわよ。ずっと付き添ってもらって、学校でもすぐ対応してくれたって。お礼させてほしいくらい」
「当然のことしただけです。命に別条がなくてよかったです。お大事にしてください」