超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「ゆきちゃん……いまからさ……」
『雪乃、悪い。フォーク落とした』
会いに行ってもいい?
その言葉は、耳に届いた低い声によって止まってしまった。
いまの声……。
『あ、すぐ新しいの持って行くね』
『さんきゅ』
ねぇ、いま閉店の時間だよね?
おれ、知ってるんだよ。
ぜんぶ覚えてるんだよ。
開店時間も閉店時間もさ。
なんでいるの?
いまの声ってさ……、
「……藍原くん」
だよね。
『そうです。タイミングいいですね。代わりましょうか?』
ゆきちゃん、天然も行き過ぎると罪だよ。
なんてゆきちゃんのせいにするのはよくないね。
おれと藍原くんが友達だと思っているような言い方。
ごめんね。
おれはいま、藍原くんを敵とみなしてるよ。
「大丈夫。……いますぐそっちに行くから」
『え?』
『雪乃ー、まだ?』
ゆきちゃんを急かす声が遠くで聞こえる。
藍原くんも名前で呼んじゃってさ。