超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




「ゆきちゃん……いまからさ……」

『雪乃、悪い。フォーク落とした』



会いに行ってもいい?

その言葉は、耳に届いた低い声によって止まってしまった。


いまの声……。



『あ、すぐ新しいの持って行くね』

『さんきゅ』



ねぇ、いま閉店の時間だよね?

おれ、知ってるんだよ。
ぜんぶ覚えてるんだよ。

開店時間も閉店時間もさ。


なんでいるの?


いまの声ってさ……、



「……藍原くん」


だよね。



『そうです。タイミングいいですね。代わりましょうか?』



ゆきちゃん、天然も行き過ぎると罪だよ。

なんてゆきちゃんのせいにするのはよくないね。


おれと藍原くんが友達だと思っているような言い方。

ごめんね。
おれはいま、藍原くんを敵とみなしてるよ。




「大丈夫。……いますぐそっちに行くから」

『え?』

『雪乃ー、まだ?』


ゆきちゃんを急かす声が遠くで聞こえる。

藍原くんも名前で呼んじゃってさ。




< 283 / 400 >

この作品をシェア

pagetop