超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。




「なぁ、雪乃」

「……うん。付き合ってる」



おれが言ったこともあるんだろうな。

だからはっきりと言ったんだもん。
隠さないって示したんだもん。


ゆきちゃんが言葉にして藍原くんの質問に答える。




「ふーん。まぁ、関係ないけど」



気にしていないかのように一度伸びをする。

カウンターの上に置いていたスマホをポケットに入れておれに近づく。


いや、厳密にはおれじゃなくておれがまだ抱き締めているゆきちゃんに。



「じゃあな、雪乃。また来るわ」



さり気なくゆきちゃんの頭に手をポンと置いてから、おれを睨んで店を出て行った。


これは、諦める気はないってこと。
宣戦布告、されたな。


黒瀬くんの次は藍原くんかよ。
ゆきちゃんほんと勘弁して。


おれの心臓がもたないよ……。



そう思って、ふたりきりになった空間でゆきちゃんをさっきよりも強く抱きしめる。

離さないように、離れないように。




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