超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「何名様ですか?」
近づいて声をかけるも、深くかぶられたキャップで顔はあまり見えない。
「……ひとりです」
「かしこまりました。少々お待ちください」
お客様を待たせすぎるわけにはいかないから、小走りでカウンター内に行き常に置いてあるタオルを3枚くらい持つ。
すぐに戻ってお客様に差し出す。
「どうぞ、お使いください」
「え……いいんですか?」
「はい。しっかり拭いてくださいね。風邪ひいたら大変ですから」
ゆっくりと伸ばされる手の上にタオルを置く。
すごく濡れてるから、長い間外にいたのかな?
きっと寒いよね。
梅雨の時期はジメジメもするし、気持ち悪いはず。
「ありがとうございます」
少しかすれた優しい声。
耳に心地よくて笑顔で返す。