超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
強く強く、離さないように。
離れないように。
おれから離れていかないように。
ゆきちゃんを抱き締める。
「ぜったい渡さない。ゆきちゃんはおれの」
自分以外の人が好きって言うだけでモヤモヤする。
ゆきちゃんの気持ちはおれにあるってわかってる。
でも、あの真剣な藍原くんの視線にモヤモヤするんだ。
何回も思った。
ゆきちゃんはおれのだって。
ゆきちゃんは渡さないって。
そのたびにゆきちゃんはおれを安心させてくれるのに、また不安になる。
すきすぎて不安になるなんて変なの。
「わたしは颯くんの。颯くんはわたしの」
少し体を離して、おれの頬を両手で包み込み優しく微笑むゆきちゃん。
どれだけ不安に感じても、何度でもゆきちゃんはおれのだって教えてくれる。
ゆきちゃんのほうが年上みたいだ。
こんなゆきちゃんを見ると、やっぱり不安になる時間なんて無駄だって思う。