超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「お席は好きなところに座ってくださいね」
いまはほかにお客様いないし、ちょうどよかったかもしれない。
この方も周りを気にせずに済むもんね。
「はい、ありがとうございます」
再び優しい声でお礼を言ってくれるけど、体をしっかりとタオルで拭いていて動こうとしない。
「お客様……?」
「あ、すみません。店内をこれ以上濡らすわけにはいかないので」
入ってきてあれですけど、なんて苦笑混じりのお客様に思わず笑ってしまった。
心も優しい人なのかな?
「大丈夫ですよ」
「でも……」
「椅子は全てプラスチックなんで濡れても平気です。お気になさらずどうぞ」
そう促すとやっと動いてくれた。
そして真ん中あたりのカウンター席に座った。
少し意外に感じる。
ひとりで来て自分以外にだれもお客様がいなかったら、伸び伸びとできるテーブル席に座ると思ってたから。