超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
「あの……空野さん?」
「ゆきちゃん、隙ありすぎ。前にも絡まれてたの忘れたわけ?」
「いや、今回は手首掴まれただけで、なにをしたかったのかよくわからないんですけど……」
「鈍感もほどほどにして。心配だから。はぁ……」
顔は見えないけど、安堵したかのように力が抜けたのがわかる。
空野さんの重みがわたしに少しかかる。
「こうやって簡単に後ろからおれに抱き締められてるし」
「それは空野さんだからいいんです。助けてくださってありがとうございます」
「もう、この子はほんと……」
わたしに回る腕に力が入る。
だから、空野さんの手に自分の手を重ねた。
なんだか、ドキドキとうるさい。
いまになってさっきの恐怖心でも現れたのか、それともこの腕のせいか。
そんなこと考えなくてもわかる。
きっと、後者だ。
「あ、あのそろそろ離してもらってもいいですか?」
「やだ。だってまた絡まれるでしょ?」
「空野さんがいてくれたら大丈夫です」
「もうほんと」
一度ぎゅっとしてからゆっくり離してくれる。
振り向くと、急いできたのか前髪が上がっておでこが出ている空野さん。