超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
メガネもキャップもつけていない、そのままの空野さん。
太陽の光に照らされて、いつもよりかっこよく見える。
なんでか、まだドキドキがおさまらない。
もう抱き締められていないはずなのに。
「今日はメガネしてないんですか?」
「あ、やば。キャップはどこだ?」
わたしの声に反応して、白のカッターシャツの胸ポケットからメガネを出してかける。
そしてキャップを探すためキョロキョロする。
「あー!波打ち際で暴れてる」
気づいた空野さんはすぐに靴と靴下を脱いで取りに行っていた。
キャップについた砂を払って、濡れたままなはずのキャップを深くかぶる。
「ふふっ。空野さん忙しないですね」
「だってゆきちゃんに会いたくて急いだもん。たまたま近くにいたからさ」
またトクンと大きく心臓が跳ねる。
なんだろう……?
「ゆきちゃんほんとかわいい!このまま連れて帰りたい」
「空野さんは優しいですね」
女の子が喜んでくれるようなセリフをさらっと言ってしまう。
後半のセリフでからかってきているけど。
「本気で言ってるんだけどな」
「わたしも本気で言ってますよ」
「むむっ……伝わってない……」