超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
こんなの知らなかった。
でも、空野さんといるとたまにある。
久しぶりだからかいまは特にドキドキしてしまう。
せっかく顔を隠して距離をとったのに、その手を掴んでわたしの顔から離す。
再び至近距離で交わる視線。
これは、やばい。
なにってはっきりとは言えないけど、やばい。
心臓がおかしい。
全身が熱い……。
「ゆきちゃん?」
空野さんがわたしの頬を両手で包み込んでじっと見てくる。
目を逸らすことなんてできなくて、空野さんをわたしも見つめる。
「なにしてんの?」
だけどすぐにそんな声が聞こえて視線を外す。
声のしたほうを見ると、黒瀬くんが少し息を切らしながら歩いてきてすぐ近くで止まる。
「黒瀬くん。あ、ごめんね。わたし走るの遅くてついて行けなかった」
「うん。でも、この人は?」
「空野さんは知らない人に絡まれているところを助けてくれたの」
「そっか。大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。すぐに空野さんが来てくれたから」
「……そう。ありがとうございます。じゃあ、白川は俺らと来てるんで、つれていきますね」
黒瀬くんがわたしの手を引っ張り空野さんと離れる。