超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。
熱が下がり心拍数も落ち着く。
さっきのはなんだったんだろうか。
「あの、空野さん。さっきはありがとうございました」
「うん。どういたしまして」
黒瀬くんが来てからなにも言わなかった空野さんだけど、わたしの声に反応してくれる。
ニコッと微笑む表情にまたドキッと音を立てた。
「今日は会えてすごくうれしかったです」
「おれも。うれしかったよ。元気出た」
その時、空野さんのスマホが鳴った。
画面を確認して苦笑いをした気がした。
「おれも呼ばれてるから行くね。また連絡するよ」
「はい、待ってます」
「行くよ、白川」
「あ。うん」
黒瀬くんに声をかけられる。
なんだか少し名残惜しいけど。
まだ空野さんといたかったな、なんて思ってしまうけど我慢。
そんなわたしに気づいたのかはわからないけど、空野さんが近づいてくる。
まだつかんでいた黒瀬くんの手に力が入り引っ張られるけど、空野さんがわたしの後頭部に手を回して引き寄せた。
かと思えば“ちゅっ”と音を立てておでこに触れるやわらかい温もり。
「え……?」
「またね、雪乃」
「っ……!?」
頭をぽんぽんとしながら言われたセリフに声にならない声が出る。