僕の世界の半分で
「母さんもゆんちゃんに会いたかったな」
「今日会えるだろ。とりあえず俺もう行くから」
「いってらっしゃい…って、ボタン!」
「閉めるってば」
「もー、しっかりしてよほんとー…」
どんだけボタンのこと気にしてるんだ、母さんは。
僕はしぶしぶ一番上までボタンを閉める。
「じゃ、いってきます」
慣れないローファーを履き、父さんと母さんにそう言って家を出る。
晴れわたった空が広がっている。
心地よい、春を感じさせる風が制服を突き抜けた。
向かう先は、家の団地を抜けて少し歩いたところにある彼女の家だ。
この道はもう数えきれないほど通った。
春を迎え、彼女と《写真を撮る》のは今年で何度目になるのだろうか。
――変わらないこの時期が、今年もやって来た。